第1回 目的は強い企業を作ること


賃金制度の見直しを行う際に、その目的をたずねると色々な答えが返ってきます。もちろん、企業の置かれている環境や経営方針によってその目的は異なると思います。

例えば、「もっとやる気をもってもらいたい」とか「成果主義にしたい」とか・・・。
しかし、これらはどうも真の目的では無いように思います。「なぜ、意欲を持ってもらいたいのか?」、「なぜ、成果主義にしたいのか?」と続けると、だんだんと本当の目的が見えてきます。その答えはどの企業でもほとんど同じで、要約すれば、「強い会社をつくるため」ということになります。これこそが真の目的だと思います。

強い企業とは厳しい企業間競争に勝ち残れる会社、ライバル企業以上にお客様からの支持を受ける事のできる会社です。
強い企業でなければ生き残る事ができません。生き残ることができなければどんな立派な賃金制度も絵に描いた餅になってしまいます。賃金どころか雇用を守ることさえできません。

会社内で行われている日々の活動は、全て「強い会社」を目指しています。賃金制度や人事制度だけが別の目的、別の価値観で存在できるわけがありません。
目的が会社を強くする事であるとはっきりしていれば、制度を見直す途中でわき道にそれたり、重箱の隅にとらわれてしまうような事態を避ける事ができます。
迷った時には、それが「ほんとうに会社を強くする」という目的にかなっているかを真剣に考えてもらう事にしています。

とかく、賃金の問題を真剣に議論すると労働者と経営者、いわゆる労使で意見が一致しない事もあります。しかし、「会社を強くするために」という目的を見失わなければ必ず、進むべき方向は見えてきます。
もちろん、会社を強くするための賃金制度見直しは、「会社に都合の良い会社本位の制度」を作る事ではありません。強さが一時的な強さではなく、継続できる強さである事は当然です。身勝手な会社本位の制度では、継続した強い企業を作る事ができるか極めて疑問です。

一方で、社員に都合の良い、甘い制度でない事も当然です。公務員でない以上、賃金の源は、会社全体で生み出す付加価値であり、広い意味での利益です。強い企業になってより多くの原資を生み出せる会社にならなければ、賃金の原資はどこからも生れてきません。処遇は与えられるものではなく自分達の努力で獲得するものです。

いずれにしても、労使どちらかに都合の良い制度では強い企業作りという目的は達成できません。両者に厳しい役割と責任を求める制度こそが目指す制度だと思います。


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